優花

養護施設にいる子どもたちには、素敵な名前を持っている子どもが多い。

この子も そうだった。
優しい花と書いて、優花(小2)。
そして、妹の和音(幼稚園)。

父親は大工さん。
母親は、成人になると発病しいずれは命を失うという難病で入院中。

2人が施設に来たときの理由は、父親が「通院と子育てを両立できない」というものだった。

職員側とすれば、父親には妻の看病に専念させ、子どもを預かるという、さほど難しいケースではなかった。

姉の優花も、妹の和音も一番最初の日は、父との別れに夜通し泣いていた。
しかし、1週間もすると明るく、キャっキャと笑い、特に優花は妹思いであった。

和音の朝の着替えや、幼稚園の支度まで世話をしている、名前の通り、優しい子だった。
月に一度は、父と共に 母親の病院へも行った。

母親もまだその頃は、入院しているといえども。シッカリとしていた。

しかし、半年位してからだろうか。
母親の症状が急激に悪化し、徐々に記憶が無くなり、
姉が母親に、「優花だよ、お母さん!」と言っても、母親は娘の名前すら判らなくなってきた。
通院に立ち会ったとき、波だが止まらなかった。

丁度その頃からか、父親宅にお見舞いの日程を調整するために電話をすると、見知らぬ女性が電話口に出るようになってきた。
その見知らぬ女性は、最初、「近所の者です。」と答えていた。

他の日に電話をしても、いつもその女性が電話口に出る。
そして、「※△さんは、今夜は遅くなるそうですから、代わりに聞いておくよう言われています。」と言う。

世話をしてくれている近所の方といえども、立ち入った話なので、話すわけにはいかない。
※△さんが何時頃に帰宅するのか伺い、夜遅い時間であったが訪問した。

状況は、最悪だった。
こんな状態の父親を不憫に思って近寄った彼女と、父親は同棲していて、彼女のお腹には新しい命が宿っていたのだ。

既に、通院にも父親としての役割も果たせないでいた。

こうなると、子どもと親とのパイプ役どころか、大人の男と女の調整役もしなくてはならなくなってくる。

子どもを24時間預かって生活を共にしている現場の我々職員としては、ついつい子どもの立場を重視してしまう。

父親と共に病院へ見舞いに行かせることについて、職員の間でも賛否両論だった。
「自分が大人になった時に、ああやって死んじゃうんだと悲観するのではないか?」
「病気になったら、男が浮気をすると思ってしまうのではないか?」
「新しい家族の中に帰すべきかどうか」

職員会議は何日も継続した。
泊まり明けでフラフラな状態であっても、その子たちの未来の為に話し合った。

その時に職員達で出した答えが合っていたのか。。小生にとっては、今でも答えは出ない。

明るかった優花の顔が日増しに淋しい顔になっていったことは、瞼に焼き付いている。

(※もちろん、脚色していますから、エッセイとしてみてください)

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プロローグ

(小生が昔、働いていた養護施設のことを少しずつ書き残していこうと思う。。
そのため、新しいカテゴリー(子どもを旅する)を追加した。)

児童養護施設というと、障害者の施設だと勘違いされるケースが多い。

障害は一切無い。
有るのはココロに負った傷だ。

対象は2~18歳までの子どもたちで、その親に養育能力がないと判断したらば、受け入れられる。

終戦直後は、戦災孤児の施設だったが、今は、親は生きているのに育てることが出来ないケースが増えている。

だから、ここにいる子どもたちは、勝手な大人たちが作った社会問題の被害者である。

もう少し、生々しく書くと
例えば、
離婚後、我が子を気にかけられなくなったタクシー運転手、コンビニ店長、夜のお店で働くママ、売春の結果出来てしまった子、親に強姦されてしまった子…

ケースは様々だ。

大人の女と男の関係に「離婚」という選択肢があることは理解しているが、「離婚」の結果、子どもがバラバラになったり、寄りどころを無くして不安定になるケースが多いことも、大人は理解しなければならぬ。

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